我々は地球外生命体である。
地球人(Earthians)は我々のことをそう呼ぶらしい。
地球人?
バイアス人のことだ。彼らは、自分たちのの惑星を地球(Earth)と呼んでいるので、自ら地球人と名乗っている。
地球?なんで?バイアスに満ちているんだから、バイアス星のほうが適切だろう。
なぜだか知らない。とにかくそう呼んでいるんだ。厳密に言うと、英語と呼ばれる言語でEarthと呼ばれているのであって、別の言語では別の呼び名がある(※これは英語からの翻訳です)。
我々は英語で話しているんだろう?
そうだ、翻訳機が正しく機能していればだが。
地球人はみんな英語を話せるんだろう?
実はそうではない。日本人と呼ばれる部族のほとんどは上手く英語を話せないと聞いている。
じゃあ、なぜ、我々は英語で話しているんだ?
地球で共通語として使われているからだ。
ははあ、じゃあ、多くの日本人はトランスレーターを使うんだね?
そう、しかし、トランスレーターといっても、我々が使うような機械ではなく、人間トランスレーターだ。優秀な翻訳機は地球ではまだ開発されていない。ところが、聞く所によると、人間トランスレーターの多くは無責任な人たちで、原文のコンテキストをよく理解せずに翻訳してしまうらしい。
ははあ、想像はつく。
実は、我々には名前がまだない。
残念だがそうだ。それが、ここに送られた理由と関係している。
地球人には理解しにくいかもしれないけど、我々は「我々」と称しているものの、物理的には一個人なんだ。「Hypothesizer」と「Rebutter」は名前のように聞こえるかもしれないけど、実はこれらはサブネームだ。我々の惑星では、バイアスを治癒する方法として、精神を「Hypothesizer」と「Rebutter」に2分割して、各々が互いをチェックする。
地球の一部の国家では、政府の権限を分立させるシステムがあるようだ。しかし、地球人はそうした方針を個人には適用しない。
とにかく、我々の惑星では、バイアスは社会を腐敗させる元凶と見なされており、バイアスを取り除くための厳格な政策が採択されている。そうした政策の1つとして、だれもが、バイアス無しテストに合格しなければならない。このテストに合格してはじめて、人間(human)として認められ、名前を持つことを許される。名前を選ぶと、例えばGeorgeとすると、我々は、George-HypothesizerおよびGeorge-Rebutterとなる。
そうだ。我々の名前が「-」で始まっているのは、我々がテストに不合格であり、人間として認めてられないことを示している。実際のところ、我々はホンキ−(honkey)と呼ばれている。
(すすり泣く)
. . .
その裁定の妥当性は理解できるんだ。バイアスはヒューマニティに反しており、したがって、バイアスに満ちているものはヒューマニティに欠けていると判断される。ヒューマニティに欠けている者は、確かに、人間ではない。. . . 非の打ち所が無い論理だ。
まあ、すくなくとも我々の惑星では、それが、あらゆる価値観の主柱になっている。
とにかく、バイアスの本質、バイアスの害悪、バイアスを治癒する方法を学ぶために、我々はここに送られたわけだ。ここバイアス惑星には教材があふれているということかな?
そうだ。別の理由として、地球人の脳の生物学的構造が我々の脳のものと極めて類似しているということもある。全く異なった構造の脳の思考法は、我々の学習の良い教材にはならないだろう。
なぜ、我々の惑星で学習を続けさせてくれなかったんだろう?他の人には、我々の惑星での学習で十分だったのに。
残念ながら、我々には十分でなかった。
うーん、. . . 反論できない。. . . テストに落ちたのは、. . . 3回だもんな。. . . それで、. . . 本物の、より生々しく、邪悪な、バイアスの例を見るべしと判断されたわけだ。. .
そのとおりだ。
. . . 我々の脳の構造が地球人の脳のそれととても似ていて、どうやって、我々は、バイアスを治癒できるんだろう?望みがない気がする。
それが、我々の見つけなければならないことだ。
脳の生物学的構造が似ているということは、地球人もバイアスを治癒できるということなのだろうか?
分からない。相違もあるのであって、そうした相違が決定的なのかもしれない。それに、気をつけなければいけない。君はステレオタイプ化を行なっている。すべての地球人は同一ではない。一部の地球人は、バイアス無しテストで我々よりも高得点を挙げるかもしれない。ステレオタイプ化はバイアスの典型的な原因であり、それを我々の思考法に住むつかせていては、人間になれる可能性などまるでない。
分かったよ。. . . ああ、早く人間になりたい。