2017年5月27日土曜日

3: 不換紙幣は本当に中央銀行に対する債権なのか?

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不換紙幣は何に対する債権なのか?

-Hypothesizer

兌換紙幣が中央銀行に対する債権だというのは分かるのだが、不換紙幣が中央銀行に対する債権だというのが完全には納得できない。だって、紙幣と交換に私は何を得られるというのか?

-Rebutter

ああ、君の質問は理解できる。

-Hypothesizer

典型的な説明は、ただの変哲もない紙切れである紙幣は、人々がその価値を信じているから価値を持っているというものだ。それは分かるし、その価値を否定はしない。しかし、不換紙幣が債権だと呼びうるのであれば、紙幣と交換に何かを請求できるはずだ。その何かとは何なのか?「紙幣と交換に同額の別の紙幣を得られる」などという答えは受け入れない。そんな交換は、紙幣が破れるか何かした場合以外無意味だ。そんなまれな場合のために私は紙幣を持っているわけではない。

-Rebutter

君の質問は理解できる。

-Hypothesizer

. . . それで?

-Rebutter

それで何だ?

-Hypothesizer

君に答えはないのかい?

-Rebutter

うーん、その質問に対する確立された理論を探してはみたのだが、満足のいくものは見つけられなかった。

私の説は、紙幣の額面額に相当する何かを得るために何かをしてくれるように中央銀行に要求する権利を請求できるというものだ。

-Hypothesizer

ふーむ、ちょっと分かるが、完全には納得できないな。それはちょっとあいまいすぎる権利じゃないか?「何かをしてくれる」というのはどういう意味なのだ?一体、中央銀行が我々に何をしてくれるのか?

-Rebutter

例えば、1ドル札と引き換えにお茶のボトルを渡すのを店が拒んだら、中央銀行は、そのボトルを我々に渡すように店に命令してくれるかもしれない。

-Hypothesizer

本当に?中央銀行の誰かが店に来て、店員が我々にボトルを渡すようにしてくれるのか?

-Rebutter

中央銀行の誰かが自ら店にやって来るかどうかは別にして、中央銀行は政府と協力して、そうした紙幣の拒否が蔓延するのを防ぐだろう。

-Hypothesizer

それにしても、頼りにならない権利だ。中央銀行がボトルの値段を決めないのだから、店は、お茶の小さなボトルに100ドル分の紙幣を要求できる。

-Rebutter

中央銀行は、店ごとの各商品の値段を決めないが、政策を通じて紙幣の価値をコントロールすることはできる。

-Hypothesizer

ああ、それは分かる。紙幣の価値が保たれれば文句は言わない。各商品の値段は、中央銀行の責任ではない。

それでも、実際に、歴史上、ハイパーインフレーションが紙幣の急速な価値下落を引き起こしている。

-Rebutter

そこには解釈の余地がある。紙幣の急速な価値下落を防ぐよう中央銀行に要求する権利が我々にあるのか、それともそんな権利は全然ないのか。

-Hypothesizer

そんな権利がないからハイパーインフレーションが起きるのではないのか?

-Rebutter

そうとは限らない。請求権は、それが間違いなく叶えられることを意味しない。中央銀行がただ義務を果たさなかっただけかもしれない。

-Hypothesizer

ああ、考えてみると、それは他の請求権でも同じだ。銀行が破綻したら、我々の銀行預金は取り戻せないかもしれない。

-Rebutter

もし、紙幣の急速な価値下落を防ぐよう中央銀行に要求する権利が我々にないのであれば、中央銀行はただ紙幣をばら撒いてハイパーインフレーションを引き起こしてよいことになる。

-Hypothesizer

それでも、紙幣の請求権はあまりにもあいまいで頼りないように思える。インフレーションは、ハイパーインフレーションでなくても、実際に起きる。というより、中央銀行が起こそうとしている。

-Rebutter

インフレーションターゲットを、中央銀行による誓約だと解釈できる。そのインフレーション率に同意しないか、中央銀行がその誓約を守ると信じないのであれば、君の資産を土地や金など別の形で持つべきだろう。

しかし、紙幣の請求権が極めて曖昧で頼りないというのには同意する。その曖昧さと頼りないさは、義務を果たさなくても中央銀行が法的に罰せられないという事実に表わされている。

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