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2017年8月12日土曜日

7: 不換紙幣は本当に中央銀行に対する債権なのか?再訪

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不換紙幣は確かに中央銀行に対する債権だ

-Hypothesizer

紙幣が中央銀行にとって負債だということには、私は既に完全に納得している。それがお金の本質だ。お金は借用証書だ。もし、紙幣を印刷することが直接に中央銀行の富を増やすと考えている人がいるならば、はっきり言うが、それは違う。中央銀行が持っている紙幣はただの紙切れでしかない。

-Rebutter

そう。それは、不可欠であるが、地球人の間でどうも広く無視されている情報だ。

-Hypothesizer

中央銀行がある実体に1万円の紙幣を借用証書として差し出し、その実体が何らかの資産との交換としてその借用証書を受け入れる時、契約が成立し、中央銀行はその実体に1万円の負債を負うことになる。その紙幣はその契約の証拠であり、契約が成立する前には、その紙幣はただの紙切れでしかない。

-Rebutter

実際に、中央銀行のバランスシートでは、公共に渡された紙幣は負債としてカウントされており、これは紙幣の性質を反映している。

-Hypothesizer

だから、お金を印刷することが富を創造すると考えている人がいるならば、繰り返して言うが、それは間違っている。

-Rebutter

お金は借用証書だ。借用証書というものはすべて、2つの実体間で契約が成立し、借用証書が貸し手に受け入れられて始めて効力を持つ。誰も何の契約も受け入れないのに、自分で借用証書を書いていても、それはただの習字の練習だ。

-Hypothesizer

紙幣を印刷する行為を絵画を描く行為と比べるのを聞いたことがあるが、それら2つの間には重大な違いがある。ある絵画が低コストで、例えば1万円で描かれ、例えば1億円として評価された場合、その絵画は誰にとってもその価値がある。

-Rebutter

その絵画を好まない人がいて、1億円とは評価しないかもしれない。

-Hypothesizer

その人は、たとえ個人的にそれを好まなくても、それが市場で1億円で売れると知れば、喜んでそれを受け取るだろう。

-Rebutter

それはそうだ。

-Hypothesizer

他方、借用証書は、誰にでも価値があるというものではない。借り手にとっては、それはただの債務だ。借り手が負債を返済することでその借用証書を取り戻せば、それはただの紙切れになる。

-Rebutter

自分が発行した借用証書を持っているのは、資産ではない。ゼロだ。

-Hypothesizer

それは預金通帳の場合も同じだ。それは誰にとっても価値があるというものではない。預金者にとっては価値があるが、銀行にとっては債務だ。他の人にとっては、それは、ただの、面白くない、為にもならない、価値のない本にすぎない。

-Rebutter

紙幣も預金も共にお金であり、借用証書としてのお金の本質を共有している。

不換紙幣は何に対する債権なのか?再訪

-Hypothesizer

私が完全には納得しないのは、不換紙幣に対して中央銀行から我々が何を請求できるのかということだ。

-Rebutter

不換紙幣が借用証書だということは、その借用証書の受け入れ手が発行者から何かを請求できるということだ。その何かとは何なのか?

-Hypothesizer

我々の以前の議論は満足のいくものではなく、私のもっとよい説明は以下のとおりだ。

商業銀行は、中央銀行から不換紙幣を借用証書として受け入れる。商業銀行は、この紙幣と交換に、中央銀行から諸資産を請求できる。

-Rebutter

国債などの資産か?

-Hypothesizer

例えばそうだ。しかし、何でもあり得る。

-Rebutter

なるほど。中央銀行は、紙幣と交換に金(ゴールド)を与える保証を停止したが、紙幣と交換に諸資産を与えることを停止してはいない。

しかしながら、金かどうかにかかわらず、借用証書の発行者の義務の遂行において、「保証」という部分が重要だろう?中央銀行は、オンデマンドで交換を受け入れる保証をしていない。

-Hypothesizer

. . . そう、それはそうだ。それが、不換紙幣の特別な性質だ。しかし、中央銀行は、資産を売るつもりがある場合、間違いなく、紙幣を支払いとして受け入れる。つまり、中央銀行は、交換を受け入れないのは、紙幣を認めないからではなく、今は資産を売りたくないからだ。

-Rebutter

それでも、中央銀行は何も保証していない。保証するというのが、借用証書の発行者の義務の本質的部分だと思うが?

-Hypothesizer

うーん、たぶん、中央銀行は交換をそのうち受け入れると保証しているのだろう。オンデマンドや定められた期日までではないとしても。

-Rebutter

期日のない義務などという概念はまやかしだと言わせてもらおう。永久に果たす必要のない義務などというものは義務ではない。

-Hypothesizer

ふーむ。. . . 実際上は、税金の支払いとして政府が紙幣を受け取ることを保証していることが重要だ。しかし、紙幣は中央銀行からの借用証書であって、政府からではない。借用証書の発行者としての中央銀行の責務の遂行をこの保証が理論的にどう説明するのかを私は知らない。

-Rebutter

同感だ。それは重要には違いないが、それが借用証書の発行者としての中央銀行の責務の遂行にどう関係するのか、満足のいく説明に出会ったことがない。

-Hypothesizer

結局、「不換紙幣」というのは、十分に考え抜かれた概念だとは思われない。. . . そのようないかがわしいものを生活の必需品として採用するというのは、地球人に典型的な行為だ。不換紙幣がいかがわしいと私が言うのは、それがただの紙切れだからではなく(借用証書は当然紙切れだ)、借用証書の発行者が、何を返済するのかをはっきりさせないからだ。そんな借用証書がありえるのか?

-Rebutter

まあ、 . . . 結局は、受け取り側がそれを借用証書として受け入れるかどうかの問題だ。ただ、それにしても奇怪な現象ではある。

-Hypothesizer

こういうことだろう。「私はあなたに返済することを約束します。」「あなたは私に何を返済するのですか?」「えーと、 . . . 分かりません。」「オーケー。受け入れます。」

-Rebutter

. . .

-Hypothesizer

どちらにしろ、商業銀行は、紙幣と引き換えに中央銀行から資産を請求できる。少なくともそのうちに。オンデマンドにではないにしても。しかし、普通の人にとって、不換紙幣は何なのだろうか?

-Rebutter

「普通の人」というのどういう意味なのか?天才ではない人か、資本家ではない人か、それとも足フェチではない人か?

-Hypothesizer

銀行ではない人だ。中央銀行と取引しない人だ。企業を含めて。彼らは中央銀行から直接何も請求できないのに、なぜ、不換紙幣は普通の人からありがたがられるのか?それが問題だ。

-Rebutter

なるほど。

-Hypothesizer

紙幣は商業銀行間で受け渡され、どの商業銀行にとっても価値がある。

-Rebutter

それはそうだろう。

-Hypothesizer

紙幣が普通の人に渡されるとき、普通の人は、中央銀行から直接何も請求できない。中央銀行は彼らと取引しないからだ。しかし、紙幣は商業銀行にとって価値があるから、商業銀行は、喜んで紙幣を受け取るだろう。だから、それを知って、普通の人々は、紙幣を、商業銀行に対して使えるものとして評価し、自分たちの間で取引の媒介として使いはじめる。

-Rebutter

それが、紙幣が公共で評価されるようになるメカニズムだろう。つまり、不換紙幣の価値の評価が商業銀行から公共へと伝播したわけだ。

ただの紙切れである紙幣がなぜ価値を持つのか?

-Hypothesizer

「ただの紙切れである紙幣がなぜ価値を持つのか?」という質問がある。よく聞く答えは、「人々がその価値を信じているから。」といったものだ。しかし、別の答えを与えてみよう。

-Rebutter

それは何だ?

-Hypothesizer

紙幣は実際にただの紙切れだ、客観的には。

それは借用証書だ。貸し手には1万円で、借り手にはマイナス1万円だ。全体にとっての正味資産はゼロだ。全体にとっては価値はない。紙切れとして以外は。

-Rebutter

それは、紙幣がただの紙切れであるという事実と符号している。

-Hypothesizer

普通の人は、紙幣を中央銀行の観点から見ないので、それが客観的に価値があると考えがちだ。しかし、そうではない。客観的には、紙幣には紙切れ以上の価値はない。

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2017年7月8日土曜日

6: ヘリコプターマネーはマネタリーファイナンシング(国債の貨幣化、財政ファイナンス)とどう関係するのか?

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マネタリーファイナンシング(国債の貨幣化、財政ファイナンス)とは何か?

-Hypothesizer

ヘリコプターマネーのリスクについてニュース記事やその他文書をいくらか目にするのだが、私が混乱するのは、しかるべき説明なく、話が財政ファイナンスに向かうことだ。なんだか、ヘリコプターマネーが財政ファイナンスになるのは自明だといわんばかりだ。ヘリコプターマネーは、必然的に財政ファイナンスを意味するのだろうか。または、財政ファイナンスは必然的にヘリコプターマネーを意味するのだろうか?

-Rebutter

私が考えるところでは、答えはノーだ。両方の質問にたいして。

-Hypothesizer

ヘリコプターマネーの目的は、公衆にお金をあげることであって、政府にではないはずだ。例えば、中央銀行が文字通りヘリコプターからお金をばらまけば、それは財政ファイナンスとは関係ない。

-Rebutter

そう。

-Hypothesizer

では、なぜ、ヘリコプターマネーが直接、財政ファイナンスを意味するかのように、財政ファイナンスが登場するのだろうか?

-Rebutter

中央銀行は文字通りヘリコプターからお金をばらまかないだろうが、それは、それでは、お金を公平にまたは意図する実体に届けられないから。実際のところ、中央銀行は、意図する実体にお金を届ける適切な手段をもっていない。だから、政府をとおしてお金を届ける。

-Hypothesizer

それでは、中央銀行は、お金を政府に、目的としてではなく手段としてあげるわけだ。

-Rebutter

そう。それは、政府は、お金を公衆に、もっとコントロールされた方法で届ける手段を持っているから。例えば、減税だ。

-Hypothesizer

ふーむ、 . . . すると、ヘリコプターマネーは、お金を政府に渡そうとするものではないが、現実には、おそらくは、お金を政府に渡さざるを得ないわけだ。

-Rebutter

少なくとも、それが、ヘリコプターマネーを届けるために大抵検討される方法だ。

-Hypothesizer

中央銀行は、国債を買うことで、お金を政府に届けるのだろう?

-Rebutter

私が知る限り、それが、検討されている主要な計画のようだ。

-Hypothesizer

しかし、国債を買うというのは、お金をあげることではない。お金を国債と交換しているだけだ。

-Rebutter

財政ファイナンスは、中央銀行が国債を直接買うことだが、それは、それ自体でヘリコプターマネーなわけではない。政府は、ただお金を得るのではなく、負債も得るのだ。

-Hypothesizer

中央銀行は子会社だから、政府は中央銀行に負債の返済も利子の支払いもしなくてすむのだという主張を聞いた。それは正しくないだろう?

-Rebutter

バイアス惑星ではそうなのか?そうではないと思うが。中央銀行の政府からの独立性は、バイアス惑星でも必要だと考えられており、政府は、中央銀行への負債を気ままに踏み倒してよいわけではない。利子については、中央銀行が自分の利益を政府に渡すのは事実であり、政府が中央銀行に支払った利子はどのみち政府に戻されるのだと考えるかもしれないが、常に、そうなるわけではないだろう。ヘリコプターマネーがゆえに中央銀行が損失を被れば、利益が残らないから、政府が支払った利子は政府に戻ってこないだろう。いくら政府でも、約束した利子を支払わなくてよいわけではないだろう。

-Hypothesizer

政府は、中央銀行と結託して、無利子の国債を発行するかもしれない。

-Rebutter

そうかもしれないし、とてもそうしそうだが、それは別問題だ。私が言ったのは、中央銀行が国債を買うことが、自動的に、政府が利子を支払わなくてもいいことにはならないということだ。無利子の国債は、無利子だから無利子なのであって、中央銀行がそれを買ったからそうなのではない。

-Hypothesizer

うーん、財政ファイナンスがヘリコプターマネーであるためには、国債は、返済期限なしの永久国債でなければならない。ただ通常の国債を買うのはヘリコプターマネーではないが、国債を買って、返済を永久に求めないのは、ただお金をあげたのと何も変わらない。. . . しかし、「永久国債」というのはインチキくさい . . .。借り主が返さなくてもよい借金など全然借金じゃない。自己矛盾だ。

-Rebutter

実のところ、あからさまに永久国債である必要もない。政府が満期の国債の支払いをできるように、中央銀行が永久に新たな国債を買い続ければ、ほとんど同じことだ。もちろん、中央銀行には、新たな国債を買うのをやめるという少なくとも名目上の選択肢が残されるから、厳密に同じなわけではない。しかし、中央銀行に、そうする本当の選択肢も意図も全然ないなら、実質的に同じことだ。

-Hypothesizer

それで、中央銀行は、それはヘリコプターマネーではないと言い張るわけか?汚いやつらだ . . .

それに、中央銀行は、直接にしろ間接にしろ、既に国債をQEで買っている。国債は、ただ一時的に金融機関の手を経由しているだけだ。それは、財政ファイナンスではないのか?

-Rebutter

もし、国債がただ形式のためにだけ金融機関の手を経由しているのであれば、それは実質的に既に財政ファイナンスだろう。中央銀行や政府が何と主張しようとも。

-Hypothesizer

ただ形式のためだけなのかどうかどうすれば判断できるのだろうか?

-Rebutter

金融機関が、国債を、ただ中央銀行がより高く買ってくれるという予期だけのために買っているのであれば、それは、財政ファイナンスだろう。

-Hypothesizer

ああ、つまり、中央銀行は、金融機関に国債を無理に買わせているのであって、金融機関が自然に買った国債を買っているのではない。

-Rebutter

まあ、金融機関は、利益が得られるから喜んで無理に買わされているのだが、君の言わんとするところは分かる。

ヘリコプターマネーは財政ファイナンスとどう関係するのか

-Hypothesizer

ヘリコプターマネーは必ずしも財政ファイナンスではないだろう?たとえ、財政ファイナンスはヘリコプターマネーの主要な手段だとしても。

-Rebutter

中央銀行は、QEで金融機関から資産を高すぎる価格で買う時、実質上、そうした金融機関にお金をあげている。それは、ヘリコプターマネーそのものだろう。中央銀行がどう主張しようとも。

-Hypothesizer

それでは、QEは既に、暗に、ヘリコプターマネーをばらまいている。

それに、一度の財政ファイナンスはヘリコプターマネーではないが、恒久的な財政ファイナンスはそうだ。

-Rebutter

それが我々の理解だ。

財政ファイナンスの本当のリスクは何か?

-Hypothesizer

財政ファイナンスを推す人々もいるし、財政ファイナンスをしないようにと警告する人々もいる。どちらが正しいのだろうか?

-Rebutter

ああ、 . . .

-Hypothesizer

ああ?

-Rebutter

重要な、予期できない要素は、人々による非理性的な反応だ。結局のところ、結果は、あいまいな、いわゆる、人々が感じる金融システムの「信頼性」に依存する。よくある警告は、金融システムの信頼性が損なわれるだろうというものだ。

-Hypothesizer

ああ、そのいつものあいまいな主張か。. . . それは、ただ人々が無知だというだけのことではないのか?財政ファイナンスの提唱者が主張するのは、財政ファイナンスは問題ではないということだ。もしそうならば、人々にそう教育することで、いわゆる「信頼性」へのダメージを防げないのか?

-Rebutter

実際のところ、経済は、無知な人々の反応に基づいて動く。人々が啓蒙されたという仮定に基づいた理論は思考実験として興味深いかもしれないが、現実を反映するという期待は持てない。

-Hypothesizer

ああ、結局、無知な人々が非理性的に反応すれば、財政ファイナンスの提唱者の理論が基本的に正しくても、問題は起こる。

-Rebutter

人々が無知で非理性的に行動するだろうと、我々は仮定しなければならないだろう。

-Hypothesizer

インフレーションが起きるだろうというのは理解できる。しかし、お金の価値が半分になるとして、各人が等倍に倍のお金を持つのであれば、問題はない。誰も損はしない。しかし、なぜ、ハイパーインフレーションが起きなければならないのか?なぜ、お金の価値が、1/10、1/100、1/1000、などにならなければならないのか?

-Rebutter

詳細なメカニズムは別にして、簡単に言えば、「信頼性」が損なわれて、人々が過剰反応するからだ。経済システムがあいまいな「信頼性」に依存する限りは、人々が、無知、直感への信頼、気まぐれ、その他何のためであろうが「信頼性」を疑えば、問題は起きる。

-Hypothesizer

財政ファイナンスが「信頼性」を損なうと警告する人々は、ただ「信頼性」のダメージを自ら引き起こしているだけじゃないのか?

-Rebutter

それは、ニワトリが先か卵が先かの問題だ。もし君が警告を控えても、他の人々が警告を続けるだろうし、「信頼性」のダメージは起きるだろう。すると、結局、良心的責務として、君は警告すべきだということになる。だって、実際に起きるのだから。

-Hypothesizer

ふーむ . . .

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2017年6月17日土曜日

5: QEは問題ないのか?、パート2

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債務超過は中央銀行にとって問題なのか?

-Hypothesizer

「中央銀行は多額の損失をこうむっても平気なのかもしれない、または意図的に損失をこうむるつもりなのかもしれない。」というのはどういう意味なのか?

-Rebutter

文が文字通り言ってる意味だ。

-Hypothesizer

. . . いくら中央銀行でも、多額の損失をこうむれば債務超過になるのではないか?

-Rebutter

もちろんなるだろう。それは数学的に避けられないことだ。

-Hypothesizer

それで問題ないのか?

-Rebutter

それがどう問題なのか私には理解できないんだよ。. . . ある実体が期日までに負債を返済できれば、その実体はデフォルトはせず、だれも困らないだろう。私企業では、債務超過は致命的だ。おそらく誰もお金を貸さないだろうからだ。

-Hypothesizer

だから、デフォルトするわけだ。

-Rebutter

他方、中央銀行は決してデフォルトしない。というのも、新しく紙幣を発行することでいくらでも自分にお金を貸せるからだ。

-Hypothesizer

うーん、すると、実体が必要なだけお金を借りられれば債務超過は問題ないわけか?

-Rebutter

何故問題なのか私は理解できないんだよ。

-Hypothesizer

ふーむ . . .

-Rebutter

誤解しないでほしい。紙幣は中央銀行にとって負債だから、紙幣を発行しても中央銀行の負債は全然無くならない。しかし、とにかく、中央銀行は決してデフォルトしないだろう。

-Hypothesizer

決してデフォルトしないというのは分かるのだが、だからといって、誰も困らないということになるのか?

-Rebutter

誰かが困らなければならないというのが私にはただ理解できないんだよ。誰かが困らなければならないのであれば、お願いだから、そのメカニズムを教えてくれ。

-Hypothesizer

ふーむ . . .

ヘリコプターマネーのことを考えてみよう

-Rebutter

ヘリコプターマネーのことを聞いたことがあるだろう?

-Hypothesizer

ああ、ある。本当にお金をばらまくんだ。

-Rebutter

中央銀行が本当に紙幣をばらまくと仮定しよう。国家間の相互作用を考慮すると事が複雑になるから、我々の国は世界の他の部分から完全に隔離されていると仮定しよう。開かれた国の場合には事が違ってくることは分かっているが、この仮定は議論のための意味ある土台にはなるだろう。

-Hypothesizer

オーケー。

-Rebutter

紙幣が、国全体のお金におけるこの国の各実体が保有するお金の割合が変わらないようにばらまかれると仮定しよう。

-Hypothesizer

うーん、例えば、3つの実体、EA、EB、ECだけが存在し、それらがそれぞれ10000円、5000円、1000円を持っている場合、中央銀行は、それぞれに10000円、5000円、1000円をあげる。

-Rebutter

そう。中央銀行の元の純資産が0円だったとすると、今は、中央銀行は16000円の債務超過になった。

-Hypothesizer

そのようだ。

-Rebutter

それで、誰が困っている?

-Hypothesizer

うーん、 . . . インフレーションが起こるんじゃないのか?

-Rebutter

起こるかもしれないし、起こらないかもしれない。お金の総額が2倍になったからお金の価値が半減するというほど単純ではない。しかし、議論上、お金の価値が半減したと仮定しよう。それで、誰が困っている?

-Hypothesizer

うーん、お金1単位の価値は半分になったが、みんなが倍のお金を持っているので、誰も得も損もしてないようだ。ただお金の単位が変わっただけだ。

-Rebutter

すると、中央銀行は債務超過になっているが、だれも困らないわけだ。

-Hypothesizer

ヘリコプターマネーというのは本質的に中央銀行が損失をかぶる政策だから、中央銀行がヘリコプターマネーをばらまけば、確かに、意図的に損失をこうむっている。

中央銀行の純資産は何を意味しているのか?

-Hypothesizer

中央銀行のお金はその国の国民のお金だから中央銀行の損失は国民の損失だ、誰かが言っていた。それは正しいのだろうか?

-Rebutter

先ほどの隔離された国のモデルでは、中央銀行はお金を国のその他の部分に対して失った。このその他の部分というのはその国の国民にあたる。

-Hypothesizer

ふーむ、つまり、国民は、中央銀行のバランスシート上でお金を失ったが、個人のバランスシート上で同額のお金を得たわけだ。全体としては、国民は、損も得も全然していない。

-Rebutter

隔離された国のモデルでは、中央銀行の債務超過は、そのお金が個人の勘定に移転されたことを示すにすぎない。

-Hypothesizer

すると、特に問題ではないのか?

-Rebutter

隔離された国のモデルでは、中央銀行の損失は国民の利得だから、全体としては、問題はないと思うね。しかし、どのようにお金が分配されたかが重要だ。先の例では、我々は、国内全体のお金における国の各実体が保持するお金の割合が変わらないものと仮定した。そうでなければ、一部の人がインフレーションによって損失を被るだろう。

-Hypothesizer

お金の全体量が倍になればお金の価値が半分になると単純化すれば(そうではないことは知っている)、お金の全体量は問題でなく、お金の分配が問題なのだ。

-Rebutter

開かれた国のモデルでは、中央銀行が外国の人々に対してお金を失ったら、そこにはまた別の問題がある。

-Hypothesizer

中央銀行の債務超過は、その根底にある問題の現れであるかもしれないが、少なくとも、それ自体として特に問題だというわけではないようだ。

中央銀行の債務超過はどう対処されるのか?

-Hypothesizer

すると、中央銀行の債務超過はそのまま放置されるのだろうか?

-Rebutter

この文書によると、そうではないようだ。この文書は、債務超過は中央銀行の評判と信頼性を傷つけるので、政府が損失を埋めるであろうと言っている。

-Hypothesizer

「評判と信頼性を傷つける」というのは、ばくぜんとした概念だ。. . . つまりは、中央銀行の債務超過が問題ないことを理解しないほど人々が無知だというだけではないのか?

-Rebutter

中央銀行の債務超過がただ漠然と中央銀行の評判と信頼性を傷つけるという以上に問題だと説明する理論を私は見つけることができなかった。

中央銀行は既にヘリコプターマネーをばらまいている

-Hypothesizer

QEで中央銀行が被る損失は、実質的にヘリコプターマネーそのものだろう。例えば、中央銀行がある資産を10,000円で買い5,000円で売るとする。中央銀行は、ややこしいことをしているが、つまりは、5,000円をただあげたんだ!

-Rebutter

公然とあげるのとあげざるを得なくなるのとに違いはあるが、結果は同じようだ。どちらにしろ、お金の分配の公平さが問題になる。

-Hypothesizer

というより、お金の配分を変えないように分配するのは、ただお金の価値を下げるだけになり、効果的でないかもしれない。むしろ、ものを買おうとする人々だけにお金を渡すのが効果的に思われる。

-Rebutter

そうかもしれない。私が見る限り、QEがとても効果的であったとは考えられておらず、お金を適切な人々に渡していないのがその原因なように思われる。

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2017年6月3日土曜日

4: QEは問題ないのか?、パート1

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QEは疑わしくみえる

-Hypothesizer

バイアス惑星のいくつかの国はQEを行なっている。量的緩和というやつだ。

-Rebutter

ははあ。

-Hypothesizer

QEはとても疑わしく見える。問題ないのか?

-Rebutter

問題ないのかとただ聞かれても、そんな漠然とした質問には答えられない。それの何が疑わしいのか?

-Hypothesizer

お金をただばらまいているように思える。よからぬ利益を誰か得てはいないのか?

-Rebutter

お金をただばら撒いてはいない。中央銀行は金融市場で資産を買うのだ。そこには大きな違いがある。

-Hypothesizer

何が違うのだ?

QEでは何が起きるのか?

-Rebutter

違いを知るには、QEで何が起きるかを知らなければならない。

-Hypothesizer

そう、それを知りたい。今すぐ知らせてくれ!

-Rebutter

. . . うーん、例えば、保険会社が1万円相当の国債を持っているとする。

-Hypothesizer

オーケー。

-Rebutter

中央銀行は、この保険会社から国債を買う。保険会社は中央銀行に口座を持っていないから(商業銀行は中央銀行に口座を持っているが、保険会社は持っていないことに注意)、保険会社は、国債の売却代金をある商業銀行に対する預金として受け取る。この商業銀行は代わりに、1万円を中央銀行に対する預金(中央銀行への準備預金)として受け取る。

保険会社にとっては、-1(国債) +1(預金としての商業銀行への債権) = 0万円。
商業銀行にとっては、-1(預金としての保険会社への債務) + 1(準備預金としての中央銀行への債権) = 0万円。
中央銀行にとっては、+1(国債) -1(準備預金としての商業銀行への債務) = 0万円。

-Hypothesizer

ああ、それでは、QEは誰の純資産も変えないわけだ。しかし、それで意味があるのか?つまり、保険会社は国債の代わりに商業銀行への預金を得て、商業銀行は預金としての保険会社への債務と準備預金としての中央銀行への債権を持った。だから何だ?それが経済のために良いのか?

-Rebutter

そうらしい。

-Hypothesizer

うーん、それでは、誰かが資産を持つその資産の形態が重要だということか。国債を持っている者は何も買わないが、お金を持っているものは何か買うんじゃないかということか?それがねらいなのか?

-Rebutter

QEが経済を改善すると想定されている詳細なメカニズムは知らないが、おそらく、そうした効果がメカニズムの一要素だろう。

それでは、誰もQEでよからぬ利益を得ていないのか?

-Hypothesizer

それでは、誰もQEでよからぬ利益を得ていないのか?

-Rebutter

よからぬかどうかは別にして、利益を得ている人々はいる。中央銀行が資産を大量に買うから、そうした資産の価格が上がりがちになる。そのため、そうした資産を取引して利益を得る人々がいる。

-Hypothesizer

ああ、そうだろうね。しかし、いわれのない損失をこうむる人はいないのか?

-Rebutter

いわれがないかどうかは別にして、損失をこうむる可能性のある人々はいる。QEで意図するようにインフレーションが実現すれば、資産をお金として保持する人々は損失をこうむるだろう。収入がインフレーションに見合うだけ上がらない労働者や年金生活者も損失をこうむるだろう。

-Hypothesizer

そうだと思ったよ。

QEは持続可能なのか?

-Hypothesizer

QEに対する別の疑念は、それが持続可能ではないのではないかといういうことだ。

-Rebutter

中央銀行がQEを永遠に続けることができるかと聞いているのなら、政府が新しい国債を大量に発行し続ける限りそうできるかもしれない。中央銀行は、例えば保険会社が買った新しい国債を買い続ける。

-Hypothesizer

すると、国債の全てかほとんどが中央銀行に保有されるわけだ。

-Rebutter

そういう可能性はある。しかし、もちろん、QEは、長い間続けるよう意図されたものではない。

-Hypothesizer

では、中央銀行はそのうち、買った資産を売らなければならない。そうするときに問題はないのか?

中央銀行がそうした資産を売る時は、そうした資産の価格が下がるのが自然、もしくは不可避ではないのか?つまり、資産の売りがそうした資産の価格を押し下げるのではないのか?

-Rebutter

まず、中央銀行は、それらの国債を満期まで持つことができる。

-Hypothesizer

日本銀行は額面額より高い価格で国債を買っていると聞いたが。

-Rebutter

その場合、中央銀行は国債を満期まで保有することで損失を避けることができない。

-Hypothesizer

それに、もし名目額で損失をこうむらなくても、QEのおかげでインフレーション率が高いから実質額で損失をこうむるだろう。

-Rebutter

そうかもしれない。

-Hypothesizer

それに、債権ではない資産の場合、その戦略は取れない。

-Rebutter

そうだろう。しかし、その反面、それらの資産の価格が高くなるまで十分長く保持できるかもしれない。

-Hypothesizer

ふーむ、 . . . 中央銀行はQEで不自然に押し上げられた価格で資産を買ったから、中央銀行がその価格以上で売れるというのは疑わしい。絶対にできないとは言わないが、できると信じるというのはただの希望的観測に思える。

-Rebutter

株式については、市場が全体として成長し続けると仮定するのであれば損失を避けられるかもしれない。債権については、いくらか損失が出るのをどうやって避けられるのか私は知らない。

-Hypothesizer

可能性として、多額の損失をこうむる可能性がある!

-Rebutter

可能性はある。

-Hypothesizer

中央銀行が多額の損失をこうむったら何が起きるんだ?

-Rebutter

中央銀行は多額の損失をこうむっても平気なのかもしれない、または意図的に損失をこうむるつもりなのかもしれない。

-Hypothesizer

はあ?

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2017年5月27日土曜日

3: 不換紙幣は本当に中央銀行に対する債権なのか?

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不換紙幣は何に対する債権なのか?

-Hypothesizer

兌換紙幣が中央銀行に対する債権だというのは分かるのだが、不換紙幣が中央銀行に対する債権だというのが完全には納得できない。だって、紙幣と交換に私は何を得られるというのか?

-Rebutter

ああ、君の質問は理解できる。

-Hypothesizer

典型的な説明は、ただの変哲もない紙切れである紙幣は、人々がその価値を信じているから価値を持っているというものだ。それは分かるし、その価値を否定はしない。しかし、不換紙幣が債権だと呼びうるのであれば、紙幣と交換に何かを請求できるはずだ。その何かとは何なのか?「紙幣と交換に同額の別の紙幣を得られる」などという答えは受け入れない。そんな交換は、紙幣が破れるか何かした場合以外無意味だ。そんなまれな場合のために私は紙幣を持っているわけではない。

-Rebutter

君の質問は理解できる。

-Hypothesizer

. . . それで?

-Rebutter

それで何だ?

-Hypothesizer

君に答えはないのかい?

-Rebutter

うーん、その質問に対する確立された理論を探してはみたのだが、満足のいくものは見つけられなかった。

私の説は、紙幣の額面額に相当する何かを得るために何かをしてくれるように中央銀行に要求する権利を請求できるというものだ。

-Hypothesizer

ふーむ、ちょっと分かるが、完全には納得できないな。それはちょっとあいまいすぎる権利じゃないか?「何かをしてくれる」というのはどういう意味なのだ?一体、中央銀行が我々に何をしてくれるのか?

-Rebutter

例えば、1ドル札と引き換えにお茶のボトルを渡すのを店が拒んだら、中央銀行は、そのボトルを我々に渡すように店に命令してくれるかもしれない。

-Hypothesizer

本当に?中央銀行の誰かが店に来て、店員が我々にボトルを渡すようにしてくれるのか?

-Rebutter

中央銀行の誰かが自ら店にやって来るかどうかは別にして、中央銀行は政府と協力して、そうした紙幣の拒否が蔓延するのを防ぐだろう。

-Hypothesizer

それにしても、頼りにならない権利だ。中央銀行がボトルの値段を決めないのだから、店は、お茶の小さなボトルに100ドル分の紙幣を要求できる。

-Rebutter

中央銀行は、店ごとの各商品の値段を決めないが、政策を通じて紙幣の価値をコントロールすることはできる。

-Hypothesizer

ああ、それは分かる。紙幣の価値が保たれれば文句は言わない。各商品の値段は、中央銀行の責任ではない。

それでも、実際に、歴史上、ハイパーインフレーションが紙幣の急速な価値下落を引き起こしている。

-Rebutter

そこには解釈の余地がある。紙幣の急速な価値下落を防ぐよう中央銀行に要求する権利が我々にあるのか、それともそんな権利は全然ないのか。

-Hypothesizer

そんな権利がないからハイパーインフレーションが起きるのではないのか?

-Rebutter

そうとは限らない。請求権は、それが間違いなく叶えられることを意味しない。中央銀行がただ義務を果たさなかっただけかもしれない。

-Hypothesizer

ああ、考えてみると、それは他の請求権でも同じだ。銀行が破綻したら、我々の銀行預金は取り戻せないかもしれない。

-Rebutter

もし、紙幣の急速な価値下落を防ぐよう中央銀行に要求する権利が我々にないのであれば、中央銀行はただ紙幣をばら撒いてハイパーインフレーションを引き起こしてよいことになる。

-Hypothesizer

それでも、紙幣の請求権はあまりにもあいまいで頼りないように思える。インフレーションは、ハイパーインフレーションでなくても、実際に起きる。というより、中央銀行が起こそうとしている。

-Rebutter

インフレーションターゲットを、中央銀行による誓約だと解釈できる。そのインフレーション率に同意しないか、中央銀行がその誓約を守ると信じないのであれば、君の資産を土地や金など別の形で持つべきだろう。

しかし、紙幣の請求権が極めて曖昧で頼りないというのには同意する。その曖昧さと頼りないさは、義務を果たさなくても中央銀行が法的に罰せられないという事実に表わされている。

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2017年4月15日土曜日

2: 「信用創造」をひもとく

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「信用創造」についての典型的な説明はどんなものか?

-Hypothesizer

「信用創造」についての典型的な説明は、以下のようなものだ。

預金準備率(RR)というものがあって、これは、商業銀行が少なくとも預金総額 * RRの通貨(紙幣またはコイン)を準備金として持っておかなければならないことを意味する。これは、預金者が預金の一部を通貨として引き出すときのためのものだ。例えば、RR = 0.1とする。

ある人PAが、ある商業銀行BAに、10,000円を通貨で預金する。
BAが、ある人PBに、10,000 - 10,000 * 0.1 = 9,000円を通貨で貸す。
PBが、ある商業銀行BBに、9,000円を通貨で預金する。
BBが、ある人PCに、9,000 - 9,000 * 0.1 = 8,100円を通貨で貸す。
PCが、ある商業銀行BCに、8,100円を通貨で預金する。
BCが、ある人PDに、8,100 - 8,100 * 0.1 = 7,290円を通貨で貸す。
以下、続く。

預金の総額は、10,000 + 10,000 * (1 - 0.1) + 10,000 * (1 - 0.1) * (1 - 0.1) + 10,000 * (1 - 0.1) * (1 - 0.1) * (1 - 0.1) + . . .となる。

これは、無限級数であり、10,000 / 0.1 = 100,000になる。

-Rebutter

ははあ . . .。それが間違っているとは言わないが、何故そんな非現実的で不必要に複雑な説明をしなければならないのだろうか。非現実的だというのは、貸出は、借り手に通貨を渡すことで行なう必要がないし、事実、普通そのようなことは行なわれないからだ。借り手はお金を預金として受け取る。

-Hypothesizer

すると、我々の説明はこのようになる。

ある人PAが、ある銀行BAに、10,000円を通貨で預金する。
BAが、PAに、10,000 / 0.1 - 10,000 = 90,000円を預金で貸す。
終了!

90,000になるのは、BAは10,000円を通貨で持っており、許される最大預金額が10,000 / 0.1 = 100,000円であり、BAには既に10,000円の預金があるから、結局、100,000 - 10,000円が、BAが追加で作れる最大預金額だからだ。無限の数の預金者も、無限の数の商業銀行も、無限の回数の貸出も、無限級数も必要ない。

-Rebutter

最大預金額は、無限級数が故に決定されるのではなく、預金準備要件が直接、最大預金額を指定しているのだ。0.1 = 10,000 / 100,000は預金準備率の定義そのものであり、10,000 / 0.1 = 100,000は、ただこの定義を変形したものにすぎない。最大預金額を得るのに、無限級数を計算する必要などない。

-Hypothesizer

なんで、そんな不必要に複雑な説明をするののだろうか?

-Rebutter

うーん、想像するに、預金は預金者が通貨を預金することで作られなければならないという前提に立っているのではないだろうか。しかし、この前提は、預金の本質に全く反している。私の考えでは、必要とされる説明は、預金の本質を明らかにするものであって、預金の本質に反する前提に基づいたものではない。

預金とは何か?

-Hypothesizer

とすると、一体、預金とは何なのか?

-Rebutter

預金とは、預金者の銀行に対する債権のことだ。銀行から見ると、預金者への債務ということになる。

-Hypothesizer

すると、預金の発生と消滅において、通貨が移動する必要はないということか。

-Rebutter

そのとおり。預金は、典型的には、銀行が借り手にお金を貸すときに発生する。

例えば、銀行が借り手に10,000円を貸すと仮定しよう。銀行は、借り手に対して、貸出として、10,000円の債権を得る。他方、借り手は、銀行に対して、預金として、10,000円の債権を得る。そうした場合、どちらからも、通貨は他方に渡されないことに注意しよう。

-Hypothesizer

銀行は、通貨を全然持っていないくても、一度にどんな額のお金も貸せることになる。規制がなければの話だが。

-Rebutter

そう、そうできる。

なぜ、お金は無から現れるのか?

-Hypothesizer

よく分からないのは、お金が無から現れてくるように見えることだ。前の例だと、なんで、10,000円が110,000円に増殖するのか?100,000円は一体どこからやってきたのか?ただの詐欺ではないのか?

-Rebutter

まず、「お金」という用語を明確にしておこう。お金という概念には、通貨と預金が含まれる。だから、「お金」という用語の君の使用法は正しい。預金はお金であり、お金は、10,000(通貨)円から、10,000(通貨) + 100,000(預金) = 110,000円に増殖した。

君の質問について言えば、お金というのは、本質的に無から現れるものだ。だから、何も規制がないと仮定すれば、取引の当事者が合意すれば、いかなる額のお金も無から作り出せる。

-Hypothesizer

はあ?数学的にそんなことは不可能ではないのか?なんで、10,000が110,000になるのか?

-Rebutter

通貨の10,000円は、増加しないので考えないことにしよう。問題は、0円の預金が100,000円の預金になったことだ。

-Hypothesizer

いいよ。

-Rebutter

この100,000円の預金は、以下の数式から現れた。

0 = +100,000 - 100,000

-Hypothesizer

はあ?

-Rebutter

プラスの額は、預金者が銀行に対して持つ債権で、マイナスの額は、銀行が預金者に対して持つ債務だ。全体としての総額は常に0になる。

-Hypothesizer

ふーむ。. . . じゃあ、0を+100,000と-100,000に分けて、プラスの額だけをカウントしていたわけだ。それであれば、ゼロからどんな額のお金も作り出せる。考えて見れば、預金は債権だから、反対側には常に同額の債務があることになる。

-Rebutter

お金は、全体としての総額0を意味するから、ゼロから作り出せる。

-Hypothesizer

通貨もやはり債権なのか?

-Rebutter

そう、その所有者が中央銀行に対して持つ債権だ。だから、その本質は預金の場合と同じだ。

預金額が通貨量によって制限されるのではない

-Hypothesizer

典型的な説明には、また別の非現実的な部分がある。典型的な説明は、通貨量が預金額を制限するかのように言うが、それは現実には即していないらしい。

-Rebutter

ほほう?

-Hypothesizer

通貨は、実際には、ほとんど紙幣やコインとして保持されているのではなく、商業銀行の中央銀行への預金として保持されており、これは、商業銀行が資産を中央銀行に売り買いすることでオンデマンドに増減させることができる。

-Rebutter

商業銀行は、いつでも中央銀行への預金を通貨に交換できるので、準備金を通貨として保持する必要はないわけだ。

-Hypothesizer

そう。そして、商業銀行は、準備率要件を満たすように中央銀行への預金額を調整する。

-Rebutter

なるほど。

-Hypothesizer

預金額は、市場の動向によって決定される。例えば、借り手が多額のお金を借りたがらなければ、預金額は大きくは増やせない。

-Rebutter

すると、預金準備額が預金額を決めるのではなく、預金額が預金準備額を決めるわけだ。

-Hypothesizer

そのようだ。

先ほどの例の全体像を見てみよう

-Hypothesizer

以上の知識を先ほどの例に当てはめてみよう。

第1に、ある人PAが、ある商業銀行BAに、10,000円を通貨で預金する。

PAは、,通貨としての中央銀行への債権を失い(-10,000)、預金としてのBAへの債権を得た(+10,000)。つまり、-10,000 +10,000 = 0。

BAは、通貨としての中央銀行への債権を得て(+10,000)、預金としてのPAへの債務を得た(-10,000)。つまり、+10,000 -10,000 = 0。

第2に、BAが、PAに、90,000円を預金で貸す。

PAは、貸出としてのBAへの債務を得て(-90,000)、預金としてのBAへの債権を得た(+90,000)。つまり、-90,000 +90,000 = 0。

BAは、,貸出としてのPAへの債権を得て(+90,000)、預金としてのBAへの債務を得た(-90,000)。つまり、+90,000 -90,000 = 0。

結局、総額は、全体としても、どの当事者にとっても、増減しない。

-Rebutter

当然だ。だれも生産行為をしていないので、総額が増えるはずがない。それに、人は普通、ただ自分に損失になることなどしない。

-Hypothesizer

それでは、どうやって商業銀行は利益を得るのか?

-Rebutter

貸出の利率と預金の利率の差異によって利益を得る。

-Hypothesizer

ははあ。 . . . 利子もゼロから現れるわけだな?

-Rebutter

そう、利子は、貸し手が借り手に対して持つ債権であり、借り手が貸し手に対して持つ債務だ。全体としてゼロだから、無から現れることができる。

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References

  • Michael McLeay, Amar Radia, and Ryland Thomas. (2014 Q1). Money creation in the modern economy. Retrieved from http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/quarterlybulletin/2014/qb14q1prereleasemoneycreation.pdf
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1: わかりにくい用語や説明をひもとく

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わかりにくい用語や説明があふれている

-Hypothesizer

バイアス惑星に来てから文書をいくらか読んだけど、わかりにくい用語や説明がいっぱいなんだよ。

-Rebutter

例えば?

-Hypothesizer

例えば、「サーバーレスコンピューティング」。

-Rebutter

どういう意味なのだ?

-Hypothesizer

サーバー群がクラウドにあって、ファンクション群がそうしたサーバーに配置されており、エンドユーザーがそうしたファンクション群にアクセスして、そうしたアクセスが必要としたリソース量にしたがってエンドユーザーが課金されるコンピューターシステムモデルのことらしい。

-Rebutter

はあ?つまり、サーバーは存在するわけだ。サーバーが存在するシステムを「サーバーレス」と誰かが呼んでいるのか?

-Hypothesizer

実のところ、誰かが呼んでいるんだ。

-Rebutter

ふーむ、 . . . まぎらわしい。

-Hypothesizer

白い箱を黒い箱と呼ぶようなものだ。

-Rebutter

どうしてそういうことになるのか?

-Hypothesizer

おそらくは、「サーバーレス」は、本当は、「サーバーの存在をエンドユーザーが意識しない」の意味なのだろう。だから、エンドユーザーからは、サーバーがないかのように見える。

-Rebutter

私がエンドユーザーである場合、サーバーの存在を意識するかどうかを決めるのは、私だ。サーバーの存在を意識すべきでないと何故、誰かが私に言わなければならないのか?

-Hypothesizer

確かに、それは余計なお世話だ。

-Rebutter

私にとっては、サーバーの存在を意識するのは、自然だし、不可避だとさえ言える。何故なら、さもなければ、それらのファンクションはどこに存在するのか?ファンクションが真空に浮かんでいるとでも想像しなければいけないのか?

-Hypothesizer

. . . もしくは、「サーバーレス」は、「サーバー群をエンドユーザーが所有していない」という意味なのかもしれない。だから、「サーバー群をエンドユーザーが所有しないコンピューティング」のほうが適切なのかもしれない。

-Rebutter

「所有しない」は「存在しない」とはまったく違う。. . . 地球人がそんなに長い名前を好まないのは理解できるが、ウィキペディアのページに挙げられている別の名前、「サービスとしてのファンクション(FaaS)」、で十分だろう。

-Hypothesizer

多くの地球人は「サーバーレスコンピューティング」のような不正確な用語が大好きだが、それは、そうした用語のほうがインパクトがあると思うからだろう。

-Rebutter

それは、ある傾向の現れだろう。つまり、正確であることよりも、直感におもねることを優先する。

-Hypothesizer

別の例として、信用創造についての説明をいくつか読んだんだが。

-Rebutter

それらの何が問題だ?

-Hypothesizer

実のところ、それらが不正確だとは言わない。しかし、問題の本質に触れておらず、非現実的なケースについて述べていて、不必要な混乱を招いていると思う。

-Rebutter

ははあ。

不思議を解消しよう

-Hypothesizer

「信用創造」についての典型的な説明を読むと、なんだかだまされたような気がする。

-Rebutter

だまされたような気がするのは、君の理解が不十分だからだ。君の理解が全体として、君の頭の中で一つに統合されていないのだ。それは、君の理解の体系に改訂が必要だというサインだ。

-Hypothesizer

言い換えると、理解の体系を改善するチャンスだということだ。

-Rebutter

いわゆる不思議というものにも同じことが当てはまる。君が不思議を感じるのは、なんらかの新たな情報が、君の理解体系にうまくはまらないからだ。それは、理解体系を根本的に変革するチャンスだ。

-Hypothesizer

では、不思議をそのまま放置するべきじゃないわけだ。不思議は解消するべきものだ。

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References

  • Wikipedia. (2017/04/05). Serverless computing. Retrieved from https://en.wikipedia.org/wiki/Serverless_computing
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