2022年7月3日日曜日

313: ウェッジプロダクト(楔積)の、テンソルアルジェブラ(テンソル代数)の要素たちのイクイバレンスクラス(同値類)とみたものは、当該テンソルプロダクト(テンソル積)構成体とどう関係しているか

<このシリーズの前の記事 | このシリーズの目次 | このシリーズの次の記事>

ウェッジプロダクト(楔積)の、テンソルアルジェブラ(テンソル代数)の要素たちのイクイバレンスクラス(同値類)とみたものは、当該テンソルプロダクト(テンソル積)構成体とどう関係しているか、の記述

話題


About: エクステリアアルジェブラ(外積代数)

この記事の目次


開始コンテキスト



ターゲットコンテキスト



  • 読者は、ウェッジプロダクト(楔積)の、任意のテンソルアルジェブラ(テンソル代数)の要素たちのイクイバレンスクラス(同値類)とみたものは、当該テンソルプロダクト(テンソル積)構成体とどう関係しているか、の記述を得る。

オリエンテーション


本サイトにてこれまで議論された定義の一覧があります。

本サイトにてこれまで議論された命題の一覧があります。


本体


1: 記述


フォーマルな定義では、ウェッジプロダクト(楔積)は、エクステリアアルジェブラ(外積代数)の要素であると定義されており、それが意味するのは、任意のウェッジプロダクト(楔積)は、あるテンソルアルジェブラ(テンソル代数)の要素たちのイクイバレンスクラス(同値類)だということだ。

例えば、\(\land (V)\)に対して、ウェッジプロダクト(楔積)\(v_1 \land v_2\)(\(v_1, v_2 \in V\))は、イクイバレンスクラス(同値類)\([v_1 \otimes v_2]\)であり、それは、\(v_1 \otimes v_2, - v_2 \otimes v_1, 2^{-1} (v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1)\)を含んでいる。

他方で、それほどフォーマルでない定義では、ウェッジプロダクト(楔積)\(v_1 \land v_2\)は、\(v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1\)または\(2^{-1} (v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1)\)であると定義されている。

第2の定義は、第1の定義から、どのように出てきたのか?

ご存知のとおり、'クラス(類)'は要素のコレクションであって、"\(v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1\)"のような、何か特定1つの要素に対応するものではない。しかし、クラス(類)は、何らかの形で、密かに、その特定の、テンソルプロダクト(テンソル積)構成体と同定され済みになっている . . .

しかも、\(v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1\)は、当該クラス(類)の中に含まれてさえおらず、その一方、\(2^{-1} (v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1)\)は含まれているが、もしも仮に後者が定義として選ばれたとしても、なぜ、その要素が当該クラス(類)の様々な要素たちの中から選ばれるべきなのか?

実のところ、当該クラス(類)から\(T (V)\)の1要素への対応付けは、論理的に言って自動的に起こるわけではなく(どうしてそうなり得ようか、実際?)、対応付けは私たちが明示的に確立しなければならない、ある程度恣意的な定義によって、ただし、定義が満たさなければならないひとまとまりの一定の必要条件はあるのであるが。

そこの"必要条件"が意味するのは、例えば、定義は、例えば、\(v_1 \land v_2 = - v_2 \land v_1\)を満たさなければならないということ。したがって、\(v_1 \land v_2 := v_1 \otimes v_2\)にはできない。

そこで、私たちはある、ある程度恣意的な定義を行なおう。

\(T^k (V)\)はレフト(左)R-モジュール(加群)であり、任意のレフト(左)R-モジュール(加群)に対するオールタネイティング(交代)k次リニア(線形)マップ(写像)に対するk次エクステリアアルジェブラ(外積代数)とウェッジプロダクト(楔積)のペアのユニバーサルマッピングプロパティによって、任意のオールタネイティング(交代)k次リニア(線形)マップ(写像)\(f: V^k \rightarrow T^k (V)\)に対して、ユニークなリニア(線形)マップ(写像)\(\tilde{f}: \land ^k (V) \rightarrow T^k (V)\)がある。fを\(k! A (v_1 \otimes v_2 \otimes . . . \otimes v_k)\)(Aは反対称化オペレーターであり、\(k = 2\)に対しては\(2^{-1} (v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1)\)で、実際、オールタネイティング(交代)k次リニア(線形)である)と取る。すると、それに対応するユニークリニア(線形)マップ(写像)\(\tilde{f}\)があり、それは、各\(\land ^k (V)\)要素に対して1つの\(T^k (V)\)要素をオファーしており、私たちはそれを受け入れる。

その定義は正当な定義である、ここでそれを綿密に証明することはしないが、定義の正当性は広く受け入れられている、その定義は、広く受け入れられている定義たちの内の1つに他ならないから。荒く言うと、それが正当な定義であるのは、それが反対称であるから。

したがって、本当は、\(v_1 \land v_2 = v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1\)ではなくて、\(\tilde{f} (v_1 \land v_2) = v_1 \otimes v_2 - v_2 \otimes v_1\)なのであって、それは実際リーズナブルである、なぜなら、あるクラス(類)とある特定要素が同一オブジェクトであるということはあり得ないから。

係数分の違いがある2つの広く受け入れられた定義があるが、両方とも論理的にオーケーなのだ、なぜなら、どの定義を取っても、本質的に係数に自由度を含むから。


参考資料


<このシリーズの前の記事 | このシリーズの目次 | このシリーズの次の記事>